大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

浦和地方裁判所 平成8年(行ウ)30号 判決 1999年5月31日

埼玉県鳩ケ谷市坂下町三丁目一二番二号

原告

有限会社 鳩ケ谷こいづみ

右代表者代表取締役

小泉昌吾

右訴訟代理人弁護士

神頭正光

埼玉県川口市青木二丁目二番一七号

被告

川口税務署長 森晟

東京都千代田区霞が関三丁目一番一号中央合同庁舎四号館

被告

国税不服審判所長 太田幸夫

右両名指定代理人

戸谷博子

須藤哲右

佐藤陽比古

原田鉄也

右被告川口税務署長指定代理人

櫻井勉

永塚光一

右被告国税不服審判所長指定代理人

村井三郎

牧野菊貫

松澤敏幸

主文

一  原告の請求をいずれも棄却する。

二  訴訟費用は、原告の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告川口税務署長が平成五年一一月二九日付けでした

(一) 原告の平成元年一〇月一日から平成二年九月三〇日までの事業年度の法人税についての更正決定のうち所得金額四七七万七四〇八円、納付すべき税額一三六万七七〇〇円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定二万八〇〇〇円を超える部分(ただし、いずれも審査裁決によって一部取り消された後のもの)を取り消す。

(二) 原告の平成二年一〇月一日から平成三年九月三〇日までの事業年度の法人税についての更正決定のうち欠損金額二六五万六三七七円、納付すべき税額△四万五七一五円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定を取り消す。

(三) 原告の平成三年一〇月一日から平成四年九月三〇日までの事業年度の法人税についての更正決定のうち欠損金額一万四五八七円、納付すべき税額△九六四九円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定(ただし、いずれも審査裁決によって一部取り消された後のもの)を取り消す。

(四) 原告の平成二年一〇月一日から平成三年九月三〇日までの事業年度の法人臨時特別税額等の決定及び無申告加算税賦課決定を取り消す。

2  被告国税不服審判所長が平成八年六月二八日付けでした原告の平成元年一〇月一日から平成二年九月三〇日まで、同年一〇月一日から平成三年九月三〇日まで及び同年一〇月一日から平成四年九月三〇日までの各事業年度の法人税についての更正決定並びに原告の平成二年一〇月一日から平成三年九月三〇日までの事業年度の法人臨時特別税額の決定に対する各審査請求の裁決を取り消す。

3  訴訟費用は、被告らの負担とする。

二  請求の趣旨に対する被告らの答弁

主文と同旨

第二当事者の主張

一  請求原因

1  原告は、パチンコ遊技場を経営する有限会社である。

2(一)  原告が平成元年一〇月一日から平成二年九月三〇日までの事業年度(以下「平成二年九月期」という。)、同年一〇月一日から平成三年九月三〇日までの事業年度(以下「平成三年九月期」という。)及び同年一〇月一日から平成四年九月三〇日までの事業年度(以下「平成四年九月期」といい、平成二年九月期、平成三年九月期及び平成四年九月期を合わせて、「本件各事業年度」という。)の法人税について行った確定申告(以下「本件確定申告」という。)、これに対して被告川口税務署長(以下「被告税務署長」という。)がした更正決定(以下「本件更正処分」という。)及び過少申告加算税賦課決定(以下「本件過少申告加算税賦課決定処分」という。)、原告が被告国税不服審判所長(以下「被告審判所長」という。)に対し、右各処分についてした審査請求(以下「本件第一審査請求」という。)、これに対する被告審判所長の審査裁決の経緯は、次のとおりである。

(1) 平成二年九月期については、別表一の一の一記載のとおり

(2) 平成三年九月期については、別表一の一の二記載のとおり

(3) 平成四年九月期については、別表一の一の三記載のとおり

(二)  被告税務署長が、原告の平成三年九月期についてした法人臨時特別税賦課決定(以下「本件法人臨時特別税賦課決定処分」という。)及び無申告加算税賦課決定(以下「本件無申告加算税賦課決定処分」という。)、右処分について原告が被告審判所長に対してした審査請求(以下「本件第二審査請求」という。)、右審査請求に対する被告審判所長の審査裁決(以下、本件第一審査請求及び本件第二審査請求に対する裁決を「本件裁決」という。)の経緯は、別表一の二記載のとおりである。

3(一)  しかし、本件更正処分のうち、別表一の一の一ないし三記載の本件確定申告にかかる金額を超える部分は、原告の所得金額を過大に評価したものであり、違法である。

(二)  そして、本件過少申告加算税賦課決定処分、本件法人臨時特別税決定処分、本件無申告加算税賦課決定処分は、本件更正処分を前提としているところ、本件更正処分は、前記のとおり違法であるから、これを前提とする本件過少申告加算税賦課決定処分、本件法人臨時特別税決定処分、本件無申告加算税賦課決定処分は、いずれも違法である。

(三)  被告審判所長は、原告が本件法人臨時特別税決定処分に対して、全部取消の審査を求めているにもかかわらず、これを一部の取消とし、その一部についてのみ審理したものであるから、本件裁決は、全体として違法である。

4  よって、原告は、請求の趣旨記載のとおりの判決を求める。

二  請求原因に対する被告らの答弁

1  請求原因1及び2は、認める。

2  同3は、否認ないし争う。

三  被告らの抗弁

1  本件更正処分

(一) 平成二年九月期

(1) 原告の平成二年九月期の所得金額は、原告の申告にかかる所得金額三七八万六五二八円に、後記2の理由により次の<1>ないし<4>の各金額を加算した七二〇九万七〇四九円である。

<1>期末における未払寄付金(寄付金否認額) 四二九四万八六三三円

<2>経費否認 六三万六四〇五円

<3>減価償却超過額 三五万四四七五円

<4>寄付金の損金不算入額 二四三七万一〇〇八円

(2) <1>期末における未払寄付金について

原告が、平成二年九月期において、損金の額に算入した有限会社こいづみ(以下「こいづみ」という。)及び有限会社新生商事(以下「新生商事」といい、こいづみと合わせて「本件二社」という。)に対する支払利息のうち、被告税務署長が法人税法(以下「法」という。)三七条六項の寄付金と認定し、同法施行令(以下「施行令」という。)七八条により、寄付金の支払がなかったものとみなされる金額である(別表八の平成二年九月期の<10>欄の合計金額)。

(3) <2>経費否認について

原告が、平成二年九月期の法人税確定申告において、荒川区東尾久のマンション(町屋ビューハイツ、以下「町屋ビューハイツ」という。)の取得にかかる支払手数料として損金の額に算入した一〇〇万円のうち、非減価償却資産(土地)の購入の対価相当額であり、損金不算入となる。

(4) <3>減価償却超過額について

原告が平成二年九月期の法人税確定申告において損金算入した町屋ビューハイツの取得にかかる支払手数料一〇〇万円のうち、減価償却資産(建物)の購入の対価相当額三六万三五九五円及びその耐用年数五二年から算出した平成二年九月期の減価償却限度額九一二〇円を超える金額である。

(5) <4>寄付金の損金不算入額について

原告が平成二年九月期において損金の額に算入した本件二社に対する支払利息のうち、被告が法三七条六項の寄付金と認定し、同条二項により算出した寄付金の損金不算入額(損金算入限度超過額)である(別表九の平成二年九月期の<12>の欄の金額)。

(6) 納付すべき法人税額 二七九四万一一〇〇円

平成二年九月期に納入すべき法人税額は、法六六条(各事業年度の所得に対する法人税の税率)一項及び二項並びに所得税法等の一部を改正する法律(昭和六三年法律第一〇九号)一七条により、前記(1)の所得金額七二〇九万七〇四九円に八〇〇万円以下の部分については一〇〇分の二九の税率を、八〇〇万円を超える部分六四〇九万七〇〇〇円(国税通則法(以下「通則法」という。)一一八条一項により一〇〇〇円未満の端数を切り捨てた後のもの、以下平成三年九月期、平成四年九月期についても同じ。)については一〇〇分の四〇の税率をそれぞれ乗じて合計した額二七九五万八〇〇〇円から、法六八条(所得税額の控除)一項及び施行令一四〇条の二(法人税額から控除する所得税額の計算)の規定により利子、配当等の収入について既に源泉徴収されていた税額一万七六一九円を控除した額二七九四万一一〇〇円(通則法一一九条一項により一〇〇円未満の端数を切り捨てた後のもの、以下平成三年九月期及び平成四年九月期についても同じ。)である。

(二) 平成三年九月期

(1) 原告の平成三年九月期の所得金額は、原告の申告にかかる欠損金額二六四万一一三五円に、次の<1>及び<2>の各金額を加算し、<3>、<4>及び<5>の各金額を控除した二一六一万三一四五円である。

<1>期末における未払寄付金(寄付金否認額) 九三四万三七五一円

<2>寄付金の損金不算入額 六五九七万五三〇四円

<3>減価償却費超過額の当期認容額 一万五二四二円

<4>未納事業税認容額 八一〇万〇九〇〇円

<5>期首における未払寄付金 四二九四万八六三三円

(2) <1>期末における未払寄付金について

原告が、平成三年九月期において、損金の額に算入した本件二社に対する支払利息のうち、被告税務署長が法三七条六項の寄付金と認定し、施行令七八条により、寄付金の支払がなかったものとみなされる金額である(別表八の平成三年九月期の<10>欄の合計金額)。

(3) <2>寄付金の損金不算入額について

原告が、平成三年九月期において損金の額に算入した本件二社に対する支払利息のうち、被告税務署長が法三七条六項の寄付金と認定し、同条二項により算出した寄付金の損金不算入額(損金算入限度超過額)である(別表九の平成三年九月期の<12>欄の金額)。

(4) <3>減価償却費超過額の当期認容額について

平成二年九月期の町屋ビューハイツの建物の減価償却超過額(損金不算入額)三五万四四七五円について、平成三年九月期の減価償却限度額に達するまでの額の損金算入額である。

(5) <4>未納事業税認容額について

平成二年九月期の法人税更正処分(ただし、裁決により一部取り消された後のもの)に対応する納付すべき事業税額の増加額であり、平成二年九月期の法人税更正処分の所得金額七二〇九万七〇四九円に地方税法七二条の二二(事業税の課税税率等)一項の税率を乗じて算出した事業税額八三三万六六〇〇円から、原告が法人税確定申告において損金算入した事業税額二三万五七〇〇円(平成二年九月期の二一万八八〇〇円及び平成三年九月期の一万六九〇〇円の合計額)を控除した金額である。

(6) <5>期首における未払寄付金について

平成二年九月期の期末における未払寄付金と同額であり、平成三年九月期の寄付金の損金不算入額の計算の洗い替えにかかる金額である(別表八の平成三年九月期の<6>欄の合計金額)。

(7) 納付すべき法人税額

平成三年九月期の所得に対する法人税額は、法六六条一項及び二項により前記(1)の所得金額二一六一万三一四五円のうち、八〇〇万円以下の部分については一〇〇分の二八の税率を、八〇〇万円を超える部分一三六一万三〇〇〇円については一〇〇分の三七・五の税率をそれぞれ乗じて合計した七三四万四八七五円から、法六八条一項及び施行令一四〇条の二の規定により、利子、配当等の収入について既に源泉徴収されていた税額四万五七一五円を控除した額七二九万九一〇〇円である。

(三) 平成四年九月期

(1) 原告の平成四年九月期の所得金額は、原告の申告に係る所得金額〇円に、次の<1>ないし<3>の各金額を加算し、<4>ないし<6>の各金額を控除した六三七万一二六四円であるから、被告税務署長がした平成四年九月期にかかる更正処分は適法である。

<1>期末における未払寄付金(寄付金否認額) 一〇八二万一五〇四円

<2>寄付金の損金不算入額 七〇六万六九五〇円

<3>繰越欠損金 一〇万八五四八円

<4>減価償却超過額の当期認容額 一万四五八七円

<5>未納事業税認容額 二二六万七四〇〇円

<6>期首における未払寄付金 九三四万三七五一円

(2) <1>期末における未払寄付金について

原告が、平成四年九月期において損金の額に算入した本件二社に対する支払利息のうち、被告税務署長が法三七条六項の寄付金と認定し、施行令七八条により、寄付金の支払がなかったものとみなされる金額である(別表八の平成四年九月期の<10>欄の合計金額)。

(3) <2>寄付金の損金不算入額について

原告が、平成四年九月期において損金の額に算入した本件二社に対する支払利息のうち、被告税務署長が法三七条六項の寄付金と認定し、同条二項により算出した寄付金の損金不算入額(損金算入限度超過額)である(別表九の平成四年九月期の<12>欄の金額)。

(4) <3>繰越欠損金について

原告は、平成三年九月期の法人税確定申告の欠損金額二六四万一一三五円のうち一〇万八五四八円を法五七条(青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越し)一項に基づき、平成四年九月期の法人税確定申告において損金の額に算入しているが、前記(二)(1)のとおり平成三年九月期の所得金額は二一六一万三一四五円となり、平成四年九月期の損金に算入すべき欠損金額はないため、原告が損金に算入した右欠損金額を所得金額に加算するものである。

(5) <4>減価償却超過額の当期認容額について

平成二年九月期の町屋ビューハイツの建物の減価償却超過額(損金不算入額)三五万四四七五円について、平成四年九月期の減価償却限度額に達するまでの額の損金不算入額である。

(6) <5>未納事業税認容額について

平成三年九月期の法人税更正処分に対応する納付すべき事業税の額であり、右法人税更正処分の所得金額二一五二万〇四二五円に地方税法七二条の二二第一項の税率を乗じて算出したものである。

(7) <6>期首における未払寄付金について

平成三年九月期の期末における未払寄付金と同額であり、平成四年九月期の寄付金の損金不算入額の計算の洗い替えにかかる金額である(別表八の平成四年九月期の<6>欄の合計金額)。

(8) 納付すべき法人税額

平成四年九月期の所得に対する法人税額は、法六六条一項及び二項により前記(1)の所得金額六三七万一〇〇〇円に一〇〇分の二八の税率を乗じた一七八万三八八〇円から、法六八条一項及び施行令一四〇条の二の規定により、利子、配当等の収入について既に源泉徴収されていた税額九六四九円を控除した額一七七万四二〇〇円である。

2  支払利息の寄付金認定について

(一) 原告による支払利息の損金算入

原告は、本件各事業年度の法人税確定申告において、本件二社からの借入金(以下「本件借入金」という。)に係る次の支払利息(以下「本件利息」という。)を損金の額に算入した(別表二の支払利息の期中計上額欄参照。)。

平成二年九月期 七八二五万八〇八一円

平成三年九月期 四三二六万一九四〇円

平成四年九月期 一八〇七万八二五三円

(二) 本件利息の一部の寄付金認定

しかし、本件利息(別表八<7>)のうち、こいづみの王子信用金庫尾久支店(以下「王子信用金庫」という。)からの証書借入金に係る年利率(証書番号六九八六五九(以下「本件第三証書借入金」という。)と同七四八三九七(以下「本件第二証書借入金」という。)の二種類の証書借入、以下「本件証書借入率」という。)から算出される平均利率(以下「本件適正利率」という。)に基づいて算出される適正利息(以下「本件適正利息」という。)(別表八<8>)相当額を上回る金額(別表八<9>)は、原告が本件二社に対し金銭その他の資産又は利益の贈与を行ったものとして法三七条(寄付金の損金不算入)六項の寄付金に該当する。すなわち、

(1) 原告と本件二社の関係等

小泉昌吾(以下「小泉」という。)は、原告及び本件二社の代表取締役であり、本件各事業年度末において、こいづみの出資金額の八六・五バーセント及び新生商事の出資金額の五〇パーセントを所有し、こいづみは、原告の出資金額の九九パーセントを所有しており、小泉が関わる原告及び本件二社は、いずれも法二条一〇号の同族会社である。なお、原告の決算期は、九月三〇日、こいづみの決算期は、四月三〇日、新生商事の決算期は、二月二八日又は同月二九日である。

(2) 本件利息の利率が不相当に高額であること

本件利息の利率と本件借入金の主たる原資であるこいづみの王子信用金庫からの証書借入金の利率(本件証書借入率)は、別表三のとおり、平成元年一〇月一日から平成二年四月三〇日までの本件証書借入率は、本件第三証書借入金につき四・九パーセントで、本件第二証書借入金につき六・四パーセントであり、同年五月一日から平成四年九月三〇日までの本件証書借入率は、本件第三証書借入金につき、四・九、五・五、六、五・八五パーセントであり、本件第二証書借入金につき六・四パーセントであるのに対し、平成元年一〇月一日から平成二年四月三〇日までのこいづみからの本件利息の利率は、三・六パーセント、同年五月一日から平成四年九月三〇日までのこいづみからの本件利息の利率は、三六、二四、九・六パーセントであり、新生商事からの本件利息の利率は、九・六、一二、二二・五七、二四、二八・八、四八パーセントであることからすると、本件証書借入率に比して本件利息の利率は、不相当に高額である。

(3) 本件利息の利率の決定時期

原告と本件二社との間では、本件借入金に係る金銭消費貸借契約書を作成していないし、貸借発生時には利率の定めがない。また、こいづみに対する本件利息率は、こいづみの決算日又は原告の決算日の翌日に、新生商事に対する本件利息率は、新生商事の決算日又はこいづみの決算日の翌日に、それぞれ変更されている(別表三参照)。

(4) 新生商事からの借入金について

新生商事は、パチンコ遊技場を閉店した後、こいづみの倉庫管理を行っているのみで、他に事業活動を行っていない。本件借入金のうち新生商事からの借入金は、合計一億七三三九万九四三四円であるが、そのうち一億六五五九万九四三四円は、こいづみから債権譲渡を受けたものであり、右債権にかかる利息のうち平成元年五月ないし同年九月分の利息は、同年一〇月に遡及して計上されている。新生商事に対する借入金の主たる原資は、こいづみの王子信用金庫からの借入れによるものであり、すなわち、本件借入金は主に原告が王子信用金庫から本件二社を通じて間接的に借り入れたものである。しかし、原告は王子信用金庫から直接に本件借入とは別に借入を受けているので、あえて本件二社を通じて借入を行う必要がない。また、本件各事業年度に対応する新生商事の法人税確定申告をみる(別表四)に、新生商事は、平成二年二月期ないし平成四年二月期の各所得金額の算定に当たって、右繰越欠損金額をそれぞれ損金の額に算入した結果、所得金額が生じていない法人であり、新生商事の平成三年二月期ないし平成五年二月期の売上高から売上原価、販売費及び一般管理費を控除した営業損益は、いずれも赤字の営業損失となっており、本件利息(新生商事の受取利息)を営業外収益として計上した結果、右各期において、繰越欠損金の損金算入前にそれぞれ経常利益が生じることとなっている。

(5) こいづみへの本件利息について

本件各事業年度に対応するこいづみの法人税確定申告をみるに(別表四)、こいづみの平成三年四月期ないし平成五年四月期の営業利益は、いずれも赤字の営業損失となっているにもかかわらず、右各期において、所得金額が生じているのは、本件利息(こいづみの受取利息)を営業外収益として計上したことがその一因でもある。

(6) 原告の法人税確定申告の内容

原告の本件各事業年度の法人税確定申告においては、本件利息の合計額が営業利益の額をいずれも上回った結果、平成三年九月期及び平成四年九月期において所得金額が生じないこととなった(別表四の原告の欄参照。)。

(7) 以上述べたとおり、本件利息率と本件証書借入率とを比較すると、本件利息率は、正常取引によるものとは認められず、本件適正利率を超える本件利息相当額は、原告が利息の名目で、その利益を同族関係にある本件二社に分散したものであって、証書借入率から算出される適正利率を上回る利率に基づく支払利息相当額は、原告が本件二社に対し、金銭その他の資産又は利益の贈与を行ったものであり、法三七条六項の寄付金に該当する。

(三) 寄付金認定額

(1) 本件借入金の原資

本件借入金の主たる原資は、次に述べるとおり、こいづみの王子信用金庫からの借入金のうち、証書番号三九七五七-六の証書借入金(昭和五九年八月一日付け借入・借入当初の元本二億三〇〇〇万円。以下「本件第一証書借入金」という。)及び証書番号七四八三九七の証書借入金(平成元年一二月一五日付借入・借入当初の元本六五〇〇万円。本件第二証書借入)である。なお、本件第一証書借入金は、昭和六三年一二月三一日にその借入残高が一括して返済され、証書番号六九八六五九の証書借入金(借入当初の元本三億五三〇〇万円。本件第三証書借入金)に借り換えがされている。

ア こいづみからの借入金の原資

別表五の一<1>の前記繰越一億三七四九万九四三四円は、原告の店舗増築、パチンコ台増設等のために、こいづみが昭和五九年六月一九日、王子信用金庫に借入申込みをし、同年八月一日、実行され(本件第一証書借入金)、これを原告がこいづみから借りたものである。一億三七四九万九四三四円は、右転借金のうち、平成元年一〇月一日当時返済未了のものである。同表<2>ないし<5>の合計二八一〇万円は、原告のこいづみに対する未払金及び買掛金を借入金に振り替えたものである。同表<6>の一億六五五九万九四三四円は、右<1>ないし<5>の合計金額であり、こいづみはこれを新生商事に債権譲渡した。同表<8>及び<11>の合計金額五〇六五万四九一一円は、原告の社員用マンションである町屋ビューハイツの取得のために、こいづみが平成元年一二月一二日に王子信用金庫に借入申込みをし、同月二五日に実行され(本件第二証書借入金)、これを原告がこいづみから転借したものである。同表<9>の借入金は、同表<10>のとおり一か月後に返済されている。同表<13>の借入金は、原告の平成四年九月期末の同月三〇日の六日前に借り入れたものであり、本件各事業年度における借入期間が短い。

右の事情によると、原告のこいづみからの借入金の主たる原資は、本件第一証書借入金及び本件第二証書借入金である。

イ 新生商事からの借入金

別表五の二<1>の一億六五五九万九四三四円は、前記のとおり新生商事がこいづみから債権譲渡を受けたものであり、うち一億三七四九万九四三四円は、本件第一証書借入金である。他の借入金である同表<2>の四〇〇万円及び<3>の三八〇万円は、王子信用金庫の原告名義の普通預金口座に入金されているが、いずれも少額である。よって、原告の新生商事からの借入金の主たる原資は、本件第一証書借入金である。

ウ ア及びイによると、本件借入金の主たる原資は、こいづみの王子信用金庫からの借入金のうち、本件第一証書借入金及び本件第二証書借入金である。本件第一証書借入金は、昭和六三年一二月三日、本件第三証書借入金に借り換えがされている。したがって、本件借入金の適正利率(本件適正利率)は、本件第二証書借入金及び本件第三証書借入金を基に算定するのが相当である。

(2) 本件適正利率

適正利率の算出方法は、次のとおりである(別表六の一ないし三参照)

ア 本件第二証書借入金及び本件第三証書借入金別に、本件各事業年度の各月の初日における借入金残高(A)に、同時期の右証書借入金の借入利率(B。乙第一号証参照)を乗じて算出した金額を合計し(C・G)、単純平均する(D・H)。

イ D・Hを合計する(K)。

ウ 右証書借入金別に、本件各事業年度の各月の初日における借入金残高(A)を合計し(E・I)、単純平均する(F・J)。

エ F・Jを合計する(L)。

オ KをLで除し、一〇〇を乗じた数の小数点三位以下を切り上げた数(M)を適正利率とする。

右の算出方法により算出した本件各事業年度の適正利率(本件適正利率)は、次のとおりである。

平成二年九月期 五・三九パーセント

平成三年九月期 六・〇七パーセント

平成四年九月期 六・〇五パーセント

(3) 本件適正利息

本件借入金の適正な利息の算出方法は、次のとおりである(別表七の一ないし三参照)

ア 本件二社からの借入金別に、本件各事業年度の各月の末日における借入金残高(a・d。乙第二号証参照)に当該事業年度の適正利率(b・e)を乗じ、これに当該事業年度の日数のうちの各月の日数の割合を乗じて、各月における適正利息(c・f)を算出する。

イ c・fを合計し(g・h)、さらに、これを合計して本件各事業年度における適正利息の金額(i)を算出する。

右の算出方法により算出した本件各事業年度の適正利息(本件適正利息)は、次のとおりである(別表七の一ないし三の合計欄参照)。

平成二年九月期 一〇〇一万三三八四円

平成三年九月期 一〇六〇万五八五五円

平成四年九月期 九四四万〇三六五円

(4) 寄付金認定額

本件各事業年度の寄付金認定額は、原告が本件利息として損金に計上した三2(一)記載の金額から、三2(三)(3)記載の本件適正利息を控除して算出した次の金額である。

平成二年九月期 六八二四万四六九七円

平成三年九月期 三二六五万六〇八五円

平成四年九月期 八六三万七八八八円

(四) 期末における未払寄付金

(1) 施行令七八条の規定によれば、法三七条六項の寄付金の支出は、各事業年度の所得の計算に当たって、支出がされるまでの間、なかったものとされる。

(2) 本件利息のうち、本件各事業年度末において、次の金額については現実に支払がされていない(別表八の<4>欄参照)。

平成二年九月期 五一〇四万六六九五円

平成三年九月期 一四〇五万八六三五円

平成四年九月期 一八〇八万六三二二円

(3) (2)の未払利息中の寄付金相当額は、未払利息が寄付金相当額と適正利息相当額のいずれの部分からなるか明確に区別できない。そこで、(2)の未払利息金に、本件利息に占める寄付金認定額の割合を乗じて、未払利息中の寄付金相当額を算出すると、その金額は、次のとおりである(別表八の<10>欄参照)。

平成二年九月期 四二九四万八六三三円

平成三年九月期 九三四万三七五一円

平成四年九月期 一〇八二万一五〇四円

(4) (3)の各金額は、施行令七八条により、本件各事業年度の所得金額の計算においては、その支出がなかったものとされ、損金の額に算入することができないから、三1の(一)(1)<1>、同(二)(1)<1>、同(三)(1)<1>のとおり、所得の金額に加算する。

(五) 寄付金の損金不算入

(1) 本件各事業年度における支出寄付金の額は、期首未払寄付金額及び三2(二)の寄付金認定額の合計額から、三2(三)の期末未払寄付金額を控除して算出した次の金額である(別表八の<11>欄参照)。

平成二年九月期 二五二九万六〇六四円

平成三年九月期 六六二六万〇九六七円

平成四年九月期 七一六万〇一三五円

(2) 寄付金の損金不算入額

本件各事業年度における寄付金の損金不算入額は、法三七条二項及び施行令七三条一項一号の規定により、次のとおり算出される。

ア 平成二年九月期

(1)の支出寄付金二五二九万六〇六四円から損金算入限度額九二万五〇五六円(平成二年九月期における原告の資本の月数換算額一〇〇〇万円の一〇〇〇分の二・五に相当する金額二万五〇〇〇円及び同事業年度における寄付金支出前所得金額七三〇〇万四四八六円の一〇〇分の二・五に相当する金額一八二万五一一二円の合計金額一八五万〇一一二円に二分の一を乗じた金額(別表九<9>欄参照))を控除した金額二四三七万一〇〇八円である。

イ 平成三年九月期

(1)の支出寄付金六六二六万〇九六七円から損金算入限度額二八万五六六三円(平成三年九月期における原告の資本の月数換算額一〇〇〇万円の一〇〇〇分の二・五に相当する金額二万五〇〇〇円及び同事業年度における寄付金支出前所得金額二一八五万三〇九三円の一〇〇分の二・五に相当する金額五四万六三二七円の合計金額五七万一三二七円に二分の一を乗じた金額(別表九<9>欄参照))を控除した金額六五九七万五三〇四円である。

ウ 平成四年九月期

(1)の支出寄付金七一六万〇一三五円から損金算入限度額九万三一八五円(平成四年九月期における原告の資本の月数換算額一〇〇〇万円の一〇〇〇分の二・五に相当する金額二万五〇〇〇円及び同事業年度における寄付金支出前所得金額六四五万四八〇〇円の一〇〇分の二・五に相当する金額一六万一三七〇円の合計額一八万六三七〇円に二分の一を乗じた金額(別表九<9>欄参照))を控除した金額七〇六万六九五〇円である。

(3) (2)の各金額は、本件各事業年度の所得の計算において損金の額に算入することができないから、三1の(一)(1)<4>、同(二)(1)<2>、同(三)(1)<2>のとおりそれぞれ所得の金額に加算する。

3  本件更正処分の適法性

(一) 原告の本件各事業年度において納付すべき法人税額は、次のとおりである(三1(一)(6)、同(二)(7)、同(三)(8))。

平成二年九月期 二七九四万一一〇〇円

平成三年九月期 七二九万九一〇〇円

平成四年九月期 一七七万四二〇〇円

(二) これに対し、本件更正処分における本件各事業年度の納付すべき法人税額(ただし、平成二年九月期及び平成四年九月期については、裁決により一部取り消された後の金額)は、次のとおりであり、いずれも、(一)の納付すべき税額と同額もしくはその範囲内である。

平成二年九月期 二七九四万一一〇〇円

平成三年九月期 七二六万四二〇〇円

平成四年九月期 一七七万四二〇〇円

(三) よって、本件更正処分は、適法である。

4  法一三二条について

本件は、適正利率を上回る本件利息の利率に係る利息相当額を法三七条六項の寄付金と認定したものであるが、原告の本件利息取引(原告の適正利率を上回る本件利息の利率に係る利息相当額)は、法一三二条の点からも否認される。すなわち、原告は法一三二条一項一号に規定する「内国法人である同族会社」に該当し、本件利息は、原告が同族関係にある本件二社に対して、支払利息の名目で利益を分散する目的で支払われたものであって、かつ、その利率が極めて高率で、原告及び本件二社の利益調整を目的として原告の各事業年度に合わせて利率が決定されていて、経済的合理性を欠き、また、本件各事業年度の法人税確定申告において、本件利息を損金計上することによって、結果的に、原告の法人税の負担は減少している。

よって、本件には、法一三二条が適用されるから、原告の法人税にかかる更正又は決定をするに際し、同族会社と非同族会社との租税負担の公平を期するために、同族会社であるが故に容易に選択することのできた租税負担を免れるような計算を否認し、同じ経済的効果を発生するために通常採用されるであろうところの計算に従って、その課税標準を計算し得るので、被告税務署長は、原告の行為又は計算にかかわらず、原告に係る法人税の課税標準もしくは欠損金額又は法人税の額を計算することができる。

5  本件過少申告加算税賦課決定処分の適法性について

(一) 本件更正処分は、第二の三3記載のとおり適法であるところ、通則法六五条に基づき、原告が本件更正処分に伴い新たに納付すべきこととなった本件各事業年度の税額(ただし、平成二年九月期及び平成四年九月期については、裁決により一部取り消された後の金額。)を基礎として、過少申告加算税の賦課決定を行った。

原告が納付すべき本件過少申告加算税の額は、次のとおりである。

(二) 平成二年九月期

過少申告加算税の基礎となる税額二六八六万円(納付すべき法人税額二七九四万一一〇〇円から、原告の平成二年九月期の確定申告における差引合計法人税額一〇八万〇三〇〇円を控除した額(ただし、通則法一一八条三項により一万円未満の端数を切り捨てた後のもの))に、通則法六五条一項の規定により一〇〇分の一〇を乗じて算出した金額二六八万六〇〇〇円に、原告が新たに納付すべき法人税額(二六八六万〇八〇八円)のうち原告の平成二年九月期の期限内申告税額一〇九万七九一九円(納付法人税額一九万〇四〇〇円、中間申告分の法人税額八八万九九〇〇円及び控除されるべき所得税等一万七六一九円の合計額)を上回る部分に相当する金額である二五七六万円(通則法一一八条三項により、一万円未満の端数は切り捨て)に一〇〇分の五を乗じて算出した金額一二八万八〇〇〇円を加えた三九七万四〇〇〇円である。

(三) 平成三年九月期

過少申告加算税の基礎となる税額七三四万円(納付すべき法人税額七二九万九一〇〇円に原告の平成三年九月期の確定申告における還付金額四万五七一五円を加算した額(ただし、通則法一一九条一項により、一〇〇円未満の端数を切り捨てた後の金額について、通則法一一八条三項により一万円未満の端数を切り捨てた後のもの))に通則法六五条一項により一〇〇分の一〇を乗じて算出した金額七三万四〇〇〇円に、原告が新たに納付すべき法人税の税額(七三四万四八〇〇円)のうち五〇万円を上回る部分に相当する金額である六八四万円(通則法一一八条三項により、一万円未満の端数を切り捨てた後の金額)に一〇〇分の五を乗じて算出した金額三四万二〇〇〇円を加えた一〇七万六〇〇〇円である。

(四) 平成四年九月期について

過少申告加算税の基礎となる税額一七八万円(納付すべき法人税額一七七万四二〇〇円に原告の平成四年九月期の確定申告における還付金額九六四九円を加算した額(ただし、通則法一一九条一項により一〇〇円未満の端数を切り捨てた後の金額について、通則法一一八条三項により一万円未満の端数を切り捨てた後のもの))に通則法六五条一項により一〇〇分の一〇を乗じて算出した金額一七万八〇〇〇円に、原告が新たに納付すべき法人税の税額(一七八万三八四九円)のうち五〇万円を上回る部分に相当する金額である一二八万円(通則法一一八条三項により、一万円未満の端数を切り捨てた後の金額)に一〇〇分の五を乗じて算出した金額六万四〇〇〇円を加えた二四万二〇〇〇円である。

(五) 本件過少申告加算税賦課決定処分における過少申告加算税の額(ただし、平成二年九月期及び平成四年九月期については、裁決により一部取り消された後の金額)は、次のとおりであり、これは、三5(二)ないし(四)における過少申告加算税の額又はその範囲内の金額である。

平成二年九月期 三九七万四〇〇〇円

平成三年九月期 一〇七万〇〇〇〇円

平成四年九月期 二四万二〇〇〇円

よって、本件過少申告加算税賦課決定処分は、適法である。

6  本件法人臨時特別税決定処分の適法性

平成三年九月期の法人臨時特別税に係る納付すべき税額は、課税標準法人税額四三四万四〇〇〇円(湾岸地域における平和回復活動を支援するため平成二年度において緊急に講ずべき財政上の措置に必要な財源の確保に係る臨時措置に関する法律(以下「臨時措置法」という。)一一条二項により、被告税務署長が主張する原告の平成三年九月期の納付すべき法人税額七三四万四八七五円から、三〇〇万円を控除した残額(通則法一一八条一項の規定により一〇〇〇円未満の端数を切り捨てた後の金額))に、臨時措置法一二条により一〇〇分の二・五の税率を乗じた金額一〇万八六〇〇円(通則法一一九条一項により一〇〇円未満の端数を切り捨てた後の金額)である。

本件法人臨時特別税決定処分における納付すべき税額は、一〇万七七〇〇円であり、これは、右被告税務署長の主張にかかる税額一〇万八六〇〇円の範囲内である。よって、本件法人臨時特別税決定処分は適法である。

7  本件無申告加算税賦課決定処分の適法性

原告は、平成三年九月期において、法人臨時特別税の申告をしなかった。平成三年九月期の法人臨時特別税に係る無申告加算税の額は、本件臨時特別税に係る納付すべき税額一〇万円(通則法一一八条三項により、一万円未満の端数を切り捨てた後の金額)に、通則法六六条一項により一〇〇分の一五を乗じて算出した金額一万五〇〇〇円である。

本件無申告加算税賦課決定処分の無申告加算税の額は一万五〇〇〇円であり、右税額と同額である。よって、本件無申告加算税賦課決定処分は、適法である。

8  本件裁決の適法性

法人臨時特別税の税額は、前記三6のとおり法人税の課税標準である所得金額に基づいて算出された法人税の額に基づいて算出されるから、法人税の課税処分について審理、判断した後、それを基に法人臨時特別税の課税に対する審理、判断を行うことになるところ、法人臨時特別税の課税額は、法人税の課税額により一義的に定まるため、その審理、判断は、もっぱら法人税の課税額の審理をすることによって尽きることになる。

原告は、審理請求において、法人臨時特別税の基準法人税額となる平成三年九月期の法人税について、納付すべき税額が零円を超える部分及び還付金の額に相当する税額が四万五七一五円を下回る部分の更正処分の取消を求めていた。

右のような法人臨時特別税の仕組み及び法人税の課税処分に対する不服審査との関係に鑑みれば、本件法人臨時特別税決定処分に対する審査請求については、実質的かつ当然にその全部を審理の対象として、本件更正処分等とともに審理、判断したものである。

よって、本件裁決の審理手続に審理不尽等の取り消されるべき違法はない。

四  抗弁に対する認否

1(一)(1) 抗弁1(一)(1)のうち<2><3>は認め、その余は、否認する。

(2) 同1(一)(2)は、否認する。

(3) 同1(一)(3)、(4)は、認める。

(4) 同1(一)(5)、(6)は、否認する。

(二)(1) 同1(二)(1)のうち<3>は、認め、その余は、否認する。

(2) 同1(二)(2)、(3)は、否認する。

(3) 同1(二)(4)は、認める。

(4) 同1(二)(5)、(6)、(7)は、否認する。

(三)(1) 同1(三)(1)のうち<4>は、認め、その余は、否認する。

(2) 同1(三)(2)、(3)、(4)は、否認する。

(3) 同1(三)(5)は、認める。

(4) 同1(三)(6)、(7)、(8)は、否認する。

2(一) 同2(一)は、認める。

(二) 同2(二)の柱書は、否認ないし争う。

(1) 同2(二)(1)は、認める。

(2) 同2(二)(2)のうち、本件利息の利率が不相当に高額であることは、否認し、その余は、認める。

(3) 同2(二)(3)は、認める。

(4) 同2(二)(4)のうち、本件借入金の主たる原資はこいづみの王子信用金庫からの借入金であること、本件借入金は、主に原告が王子信用金庫から本件二社を通じて間接的に借り入れたものであること、原告が本件二社を通じて王子信用金庫から借入を行う必然性がないことは否認し、その余は、認める。

(5) 同2(二)(5)、(6)は、認める。

(6) 同2(二)(7)は、争う。

(三)(1) 同2(三)(1)のうち、本件第一証書借入金は、昭和六三年一二月三一日にその借入残高が一括して返済され、本件第三証書借入金に借り換えがされていることは、認め、その余は、否認する。アのうち、別表五の一<1>の前記繰越一億三七四九万九四三四円が、原告の店舗増築、パチンコ台増設等のために、こいづみが昭和五九年六月一日、王子信用金庫に借入申込みをし、同年八月一日、実行され(本件第一証書借入金)、これを原告がこいづみから転借したものであること、原告のこいづみからの借入金の主たる原資は、本件第一証書借入金及び本件第二証書借入金であることは、否認し、その余は、認める。イのうち、新生商事がこいづみから債権譲渡を受けた一億六五五九万九四三四円のうち一億三七四九万九四三四円は、本件第一証書借入金であること、原告の新生商事からの借入金の主たる原資は、本件第一証書借入金であることは、否認し、その余は、認める。ウは、否認ないし争う。

(2) 同2(三)(2)、(3)、(4)は、争う。

(四)(1) 同2(四)(1)、(2)は、認める。

(2) 同2(四)(3)、(4)は、否認する。

(五) 同2(五)(1)、(2)、(3)は、否認する。

3(一) 同3(一)は、否認する。

(二) 同3(二)は、認める。

(三) 同3(三)は、争う。

4 同4、5、6、7、8は、争う。

五  原告の主張

1  本件利息の寄付金認定に対して

本件利息は、その全額が、支払利息として本件各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入できるものである。

すなわち、原告と本件二社は、その株主構成や合併をも念頭においていたこと等から、実質的には、同一会社という関係にあるところ、三社間での高金利貸付等の取引は、全体的視野に立っての経済行為で合理性がある。

新生商事は、原告がその経営権を取得した当初から赤字で、多額の債務を抱えていたが、新生商事が倒産すれば、原告及びこいづみに対する信用不安を発生させるし、こいづみ自体の営業成績も長期低落傾向にあることからすると、新生商事を再建して、債権の回収を図る必要があった。こいづみが倒産すれば、原告は、こいづみの王子信用金庫からの借入金を転借した分を王子信用金庫に対し、返済しなければならず、また、こいづみ所有の原告使用の店舗には、こいづみの王子信用金庫に対する債務の担保が設定されているから、担保権の実行により原告自体も倒産せざるを得なくなる。

そこで、このような原告及び本件二社の倒産の危機の状況下では、原告及び本件二社の再建の手法として、原告から本件二社に対し利息収入を得させたものであるが、このような行為に出たことは、経済的合理性があり非難されることはない。

なお、原告は、本件借入金の発生の都度、それに係る利率等を定めずに、こいづみの決算期末に利率を決定して本件利息を計算しているが、原告及び本件二社の限られた資金を有効に運用するためには、その資金の貸借を頻繁に行うこととなるから、その都度利率等を定めなかったとしても不合理ではないし、利息を後で定めるとの合意を否定する理由もない。

また、本件借入金についても契約書が存在しないが、原告及び本件二社との間で紛議が生じることもないし、契約書を作成すると多額の印紙税を負担することになるから、本件のように契約当事者間で紛議が発生する可能性が全くない場合は契約書を作成しないことに合理性がある。

よって、本件利息は、全額支払利息として本件各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入されるものである。

2  適正利率について

仮に、本件利息が過大であったとしても、本件借入金に係る適正な利息を計算するに当たって被告税務署長の認定した本件適正利率は、何ら合理性がなく、違法である。

すなわち、本件借入金の適正利率の算定に当たっては、法人の利益追求の観点から、王子信用金庫からの借入率に相当の手数料を上乗せして算定されるべきである。

六  原告の主張に対する被告らの反論

1  本件利息の寄付金認定について

寄付金に該当するかどうかの判定は、複数の関連会社が存在し、それぞれ密接な関連性を有している場合においても、独立した経済主体である各社ごとに行われるべきものであり、支払利息名目での支出が、原告と密接な関連性をもつ本件二社に対して行われたことをもって、寄付金であることを否定できないし、そもそも直接的な対価を伴わないでした支出が寄付金であるから、対価性につき計測不能な三社の経営の維持存続を経済的合理性として漠然と主張し、寄付金であることを否定するのは、主張自体失当である。

また、新生商事が原告が経営権を取得した当初から赤字であり、昭和六一年二月期から平成元年二月期までの間に四期連続して欠損が生じていたこと、平成元年二月期において、新生商事が、こいづみ、原告、小泉、小泉フミに対し多額の債務を負担し、遊技機メーカー等への債務も多額に及んでいたことを示しただけでは、新生商事が実際に倒産の危機にあったとまでいうことはできないばかりか、原告の新生商事に対する平成元年二月期の債権額が、原告のいうとおり三四万一〇五三円であれば、新生商事が倒産し、右債権の回収が不能になったとしても、原告の経営規模に比し損失額は、わずかであり、原告に信用不安が生じることはない。また、こいづみが倒産したからといって、原告も倒産せざるを得なくなるとの根拠はなく、このことをもって、本件利息の損金不算入の合理性を否定することはできない。

2  適正利率について

王子信用金庫は、こいづみに対する貸付に当たって、原告への転貸資金とすることを承知して貸し付けたもので、貸付金の使途が原告の店舗改装増築、パチンコ台等の設備投資、社員寮用のマンションの購入等、営業資金となることを認識した上で、貸付利率を決定しており、かつ、貸付金の返済は原告からの回収金でされることを予定していたのであり、本件借入金の主たる原資は、こいづみの王子信用金庫からの借入金のうち本件第一証書借入金及び本件第二証書借入金であることからすると、原告が支払うべき適正利息額は、原告自身が営業資金として王子信用金庫から借入をした場合の利率はいかなる水準なのかを基準にして算定すべきであるし、その際の利率は、こいづみが現実に王子信用金庫から借入をした際の利率と同水準であるとすることには、十分な合理性がある。

よって、本件借入金の適正利率は、こいづみの王子信用金庫からの借入金のうち、本件第二証書借入金及び本件第三証書借入金(本件第一証書借入金につき借替えがされた後のもの)を基に算定するのが相当であり、これに手数料を上乗せする合理的理由はない。

第三証拠

本件記録における書証目録及び証人等目録に記載のとおりであるから、これをここに引用する。

理由

一  請求原因1、2は、当事者間に争いがない。

二  抗弁1(一)中(1)<2>、<3>、(3)及び(4)、(二)中(1)<3>及び(4)、(三)中(1)<4>及び(5)、原告が、本件二社に対し、別表二のとおり本件利息を支払ったこと、本件利息の利率が別表三のとおりであることは、当事者間に争いがない。

本件の中心的争点は、<1>原告が支払った本件利息の一部(適正利率を上回る金額)を寄付金と認定できるかどうか、<2>右適正利率はいくらかであるので、以下判断する。

三  前記当事者間に争いのない事実のほか、証拠(甲第一号証の一ないし三、第二ないし第四号証、第五号証の一ないし七、第六号証の一ないし八、第七号証の一ないし八、第八号証の一ないし八、第九号証の一ないし四、第一〇及び第一一号証、第一二号証の一ないし四、乙第一ないし八号証、原告代表者尋問の結果並びに弁論の全趣旨)によれば、次の事実が認められる。

1  原告及び本件二社との関係

原告及び本件二社は、法二条一〇号に定める同族会社であり、各代表者は、いずれも小泉である。原告及び本件二社の事業年度の期間は一年で、事業年度の末日は、原告が九月末日、こいづみが四月末日、新生商事は二月末日である。なお、原告は、パチンコ遊技場を経営し、こいづみは、食料品、雑貨等の小売業を営んでおり、新生商事は、パチンコ遊技場業を営んでいたが、平成二年二月期の事業年度にパチンコ遊技場業を廃業し、それ以降は貸倉庫業を営み、専らこいづみの商品の保管、管理をしているのみで、他に事業活動は行っていない。

2  原告のこいづみに対する借入金

(一)  こいづみは、昭和五九年六月一九日、王子信用金庫に対し、原告への転貸資金として一億一七六〇万円、債務更改分として一億一二四〇万円の合計二億三〇〇〇万円の融資を申し込み、王子信用金庫は、同月二三日、こいづみに対し、元金二億三〇〇〇万円を、年利七・三パーセントで貸し付けた(証書番号三九七五七-六。本件第一証書借入金)。こいづみは、原告に対し、右借入金のうち一億〇七四二万円を貸した。なお、右債務更改される前の債務は、こいづみが、王子信用金庫から、原告に対する転貸資金として借り入れたものであり、右融資申込書には、返済資金は、原告からの回収金である旨記載されていた(甲第五号証の一)。こいづみは、昭和六〇年一一月一四日、王子信用金庫に対し、新生商事への転貸資金として、二〇〇〇万円の融資を申し込み、同月三〇日、年利七・一パーセントで実行された(証書番号五〇一七九七)が、こいづみは、右借入金のうち六〇〇万円を、原告に貸した(甲第五号証の二、乙第八号証)。こいづみは、昭和六三年七月五日、原告の転貸資金として三〇〇〇万円の融資を申し込み、同月七日、年利四・八パーセントで実行された(手形番号六六八四三〇、六六八四四八)が、こいづみは、原告に対し、右借入金のうち七〇〇万円を転貸した(甲第五号証の四、乙第八号証)。その後、こいづみの王子信用金庫に対する右二億三〇〇〇万円、二〇〇〇万円、三〇〇〇万円の各債務は、昭和六三年一二月一九日、三億五三〇〇万円の借入金(証書番号六九八六五六。本件第三証書借入金)に更改された(乙第八号証)。

なお、原告のこいづみからの借入金の平成二年九月期の期首における前記繰越金の一億三七四九万九四三四円は、原告が、こいづみから転借した王子信用金庫からの証書借入金(本件第一証書借入金等、証書番号三九七五七-六等。)のうち、平成元年一〇月一日現在において、原告がこいづみに対し返済未了のものである(乙第三号証)(別表五の一)。

(二)  こいづみは、平成元年一二月一二日、王子信用金庫に対し、原告が社員寮用マンション(町屋ビューハイツ)を取得するための資金を原告に貸すため、六五〇〇万円の融資を申し込み、王子信用金庫は、同月一五日、元金六五〇〇万円を年利六・四パーセントで貸し付けた(本件第二証書借入金、証書番号七四八三九七)(甲第五号証の五、乙第三、第四号証)。こいづみは、平成元年一二月一五日、原告に対し、九六〇万円を貸し付け(乙第七号証)、原告は、翌一六日、これを町屋ビューハイツの頭金九一〇万円、及び、浦和リハウス株式会社に対する仲介手数料五〇万円(甲第六号証の六)として支払い、また、こいづみは、平成二年三月二〇日、原告に対し四一〇五万四九一一円を貸し付け(乙第七号証)、原告は、同月三一日、町屋ビューハイツの残金四〇〇〇万円及び浦和リハウス株式会社に対する仲介手数料五三万円(甲第六号証の六)を支払った(別表五の一)。

(三)  こいづみは、平成元年一〇月一日、原告に対する一億六五五九万九四三四円の債権を新生商事に譲渡したが、右金額のうち一億三七四九万九四三四円の原資は、原告が、こいづみから転借した王子信用金庫からの証書借入金(本件第一証書借入金等、証書番号三九七五七-六等)のうち、平成元年一〇月一日現在において、原告がこいづみに対し返済未了のものと、原告のこいづみに対する未払金及び買掛金を借入金に振り替えたもの(合計二八一〇万円)の合計額である。

(四)  こいづみは、平成二年一月二一日、原告に対し、一〇〇〇万円を貸し付けたが、原告は、同年二月二一日、一〇〇〇万円を返済した。また、こいづみは、平成四年九月期の末日である同年九月三〇日の六日前である平成四年九月二五日、一〇三〇万円を貸し付けた。

(五)  本件各事業年度における原告のこいづみからの借入金の状況は、別表五の一のとおりであり(乙第七号証)、原告は、こいづみに対し、別表二記載のとおり、本件利息を支払った。

3  原告の新生商事に対する借入金

(一)  新生商事は、平成元年一〇月一日、こいづみから、こいづみの原告に対する一億六五五九万九四三四円の債権を譲り受けた。また、新生商事は、原告に対し、平成二年五月二日、四〇〇万円を貸し付け、同年一二月三一日、三八〇万円をそれぞれ貸し付けた。

(二)  新生商事がこいづみから債権譲渡を受けた原告に対する貸付金一億六五五九万九四三四円にかかる利息のうち平成元年五月分ないし同年九月分のものは、同年一〇月になって遡及して原告の支払利息割引料勘定に計上している(乙第六号証)。

(三)  本件各事業年度における原告の新生商事からの借入金の状況は、別表五の二のとおりであり(乙第七号証)、原告は、新生商事に対し、別表二のとおり本件利息を支払った。

4  本件利息の利率と本件証書借入率

原告がこいづみ及び新生商事に対する債務の利息を計算する際に用いた借入利率、並びに、こいづみの王子信用金庫からの本件第三証書借入金(証書番号六九八六五九)及び本件第二証書借入金(証書番号七四八三九七)にかかる利率は、別表三のとおりである。

5  本件利息の利率の決定時期

原告と本件二社との間では、本件借入金について金銭消費貸借契約書を作成しておらず、貸借した際、利率や返済時期等に関する約定もない。原告とこいづみとの間における本件借入金の利率は、平成元年一〇月一日(原告の決算日の翌日)から平成二年四月三〇日(こいづみの決算日)までは、三・六パーセントであったのに、同年五月一日(こいづみの決算日の翌日)から平成三年四月三〇日(こいづみの決算日)までは、三六・〇パーセント、同年五月一日(こいづみの決算日の翌日)から平成四年四月三〇日(こいづみの決算日)までは、二四・〇パーセントに上昇し、同年五月一日(こいづみの決算日の翌日)から同年九月三〇日(原告の決算日)までは、九・六パーセントに下落している(別表三)。また、原告と新生商事との間における本件借入金の利率は、平成元年一〇月一日(原告の決算日)から同月三一日まで二二・五七パーセント、同年一一月一日から平成二年二月二八日(新生商事の決算日)までは二八・八パーセント、同年三月一日(新生商事の決算日の翌日)から同年九月三〇日(原告の決算日)までは四八・〇パーセント、同年一〇月一日(原告の決算日)から平成三年九月三〇日(原告の決算日)までは二四・〇パーセント、同年一〇月一日(原告の決算日の翌日)から平成四年二月二九日(新生商事の決算日)までは、一二・〇パーセント、同年三月一日(新生商事の決算日の翌日)から同年九月三〇日(原告の決算日)までは、九・六パーセントである(別表三)。

これに対し、本件第三証書借入金の年利率は、平成元年六月四日から平成二年五月三日まで、四・九パーセント、同年五月四日から同年九月三〇日まで、五・五パーセント、同年九月四日から平成四年八月三日まで、六・〇パーセント、同月四日から同年一一月三日、五・八五パーセント、本件第二証書借入金の年利率は、平成元年一二月一五日から平成四年一一月二〇日まで、六・四パーセントである。

6  原告は、王子信用金庫から、直接借入も行っているが、借入金額は三六〇万円から五五〇〇万円までで、借入利率は年利四・六三パーセントから七パーセントまでである(乙第五号証)。

7  原告の法人税確定申告の内容

本件各事業年度における原告の法人税確定申告においては、本件利息総額が営業利益の額をいずれも上回った結果、平成三年九月期及び平成四年九月期において所得が生じていない。

8  本件二社の法人税確定申告の内容

(一)  こいづみ

本件各事業年度におけるこいづみの法人税確定申告では、こいづみの平成三年四月期ないし平成五年四月期の営業利益は、いずれも赤字の営業損失となっており、本件利息を営業外収益として計上することにより所得金額が生じている。

(二)  新生商事

本件各事業年度における新生商事の法人税確定申告では、新生商事は、平成二年二月期ないし平成四年二月期の各所得金額の算定に当たっては、繰越欠損金額をそれぞれ損金の額に算入した結果、所得金額が生じていない。また、新生商事の平成三年二月期ないし平成五年二月期の売上高から売り上げ原価、販売費及び一般管理費を控除した営業損益は、いずれも赤字の営業損失であり、本件利息を営業外収益として計上した結果、繰越欠損金控除前にそれぞれ経常利益が生じている。

9  平成元年一〇月一日から平成四年九月三〇日までの間、本件借入金の元利金の返済は、原告の営業収益によってすべて賄われた。

四  本件利息の寄付金認定について

1  前記認定事実によると、原告及び本件二社の代表取締役は、小泉であること、原告は、こいづみ及び新生商事から本件借入金を借り入れるに当たり金銭消費貸借契約書を作成していないし、利息や弁済期等についても何ら定めていなかったこと、本件利息の利率は、本件借入金にかかる金銭消費貸借契約の各当事者の決算日の翌日に大幅に変更されていること、こいづみは、平成元年一〇月一日、こいづみの原告に対する一億六五五九万九四三四円の債権を新生商事に譲渡しているが、右債権譲渡にかかる債権の利息のうち、平成元年五月分ないし同年九月分が、同年一〇月に遡及して原告の支払利息割引料勘定に計上されていること、こいづみは、昭和五九年六月二三日、王子信用金庫から二億三〇〇〇万円(本件第一証書借入金)を借り受けたが、そのうち一億〇七四二万円を原告に貸し、その余は、原告に対する転貸資金として、これまでこいづみが王子信用金庫から借り入れた債務の更改とされたこと、その後、こいづみは、王子信用金庫から原告に対する転貸資金等のために二〇〇〇万円及び三〇〇〇万円を借り入れ、そのうちの一部は、こいづみから原告に転貸されたが、これら債務は、前記二億三〇〇〇万円の債務とともに、昭和六三年一二月一九日、三億五三〇〇万円の借入金(本件第三証書借入金)に債務更改されたこと、こいづみは、平成元年一〇月一日、原告に対する一億六五五九万九四三四円の債権を新生商事に対して譲渡したが、右金額のうち一億三七四九万九四三四円の原資は、原告がこいづみから転借した王子信用金庫からの証書借入金(本件第一証書借入金等)のうち、平成元年一〇月一日現在において、原告がこいづみに対し返済未了のものと、原告のこいづみに対する未払金及び買掛金を借入金に振り替えたものの合計額であったこと、こいづみは、平成元年一二月一五日、王子信用金庫から、原告が町屋ビューハイツを取得するための資金を原告に対し貸すため、六五〇〇万円を借り受け(本件第二証書借入金)、原告に対し、右同日に九六〇万円を、平成二年三月二〇日に四一〇五万四九一一円をそれぞれ貸し付けたこと、こいづみは、平成二年一月二一日、原告に対し、一〇〇〇万円を貸し付けたが、原告は、同年二月二一日に一〇〇〇万円を返済し、平成四年九月期の末日である同年九月三〇日の六日前である平成四年九月二五日に一〇三〇万円を貸し付けたこと、新生商事は、こいづみから原告に対する債権の譲渡を受けたことのほか、原告に対し、平成二年五月二日に四〇〇万円を、同年一二月三一日に三八〇万円を貸し付けたが、これらは、いずれも比較的低額であること、本件借入金の利息の利率は、本件証書借入金の年利率に比し大幅に高いこと、本件各事業年度における原告の法人税確定申告は、本件利息総額が営業利益の額をいずれも上回った結果、平成三年九月期及び平成四年九月期において所得が生じない結果となったこと、本件各事業年度におけるこいづみの法人税確定申告では、こいづみの平成三年四月期ないし平成五年四月期の営業利益は、いずれも赤字の営業損失となっていて、本件利息を営業外収益として計上することにより所得金額が生じていること、本件各事業年度における新生商事の法人税確定申告では、新生商事は、平成二年二月期ないし平成四年二月期の各所得金額の算定に当たっては、繰越欠損金額をそれぞれ損金の額に算入した結果、所得金額が生じていないこと、新生商事の平成三年二月期ないし平成五年二月期の売上高から売り上げ原価、販売費及び一般管理費を控除した営業損益は、いずれも赤字の営業損失であり、本件利息を営業外収益として計上した結果、繰越欠損金控除前にそれぞれ経常利益が生じていることが認められる。

2  これらの事実に照らすと、原告は、自ら王子信用金庫から借入をすることが可能であるにもかかわらず、こいづみが王子信用金庫から借り入れたものをこいづみ及び新生商事(こいづみからの債権譲渡分)から転借しており、また、本件二社との間で、本件借入金にかかる金銭消費貸借契約の締結の際、利息及び弁済期等に関して何ら定めず、契約書も作成されていなかったのに、原告及び本件二社の決算日の翌日になって、突然、本件利息の利率が設定ないし変更され、しかも、本件借入金は、その原資が、主に本件第一証書借入金(その後、本件第三証書借入金)及び本件第二証書借入金によるといえるところ、本件利息の利率は、本件証書借入金の利率と比較すると、かなり高金利であって、およそ正常取引によるものとは認め難いといわざるを得ず、また、原告には、本件利息を本件二社に対して支払うことによって、平成三年九月期及び平成四年九月期において、欠損金が生じているのに対し、こいづみには、本件利息を営業外収益として計上することによって、平成三年四月期ないし平成五年四月期の営業利益において、いずれも所得金額が生じており、新生商事には、平成三年二月期ないし平成五年二月期の営業損益は、いずれも赤字であるが、本件利息を営業外収益として計上した結果、繰越欠損金控除前に経常利益が生じていることからすると、法三七条六項にいう寄付金とは、名義のいかんや業務との関連性の有無を問わず、法人が贈与又は無償で供与した資産又は経済的利益の供与、すなわち法人が直接的な対価を伴わないでした支出を示すものであるから、適正利率を超える本件利息相当額は、原告が利息支払の名目の下に、その利益を同族関係にある本件二社に分散したものであって、証書借入利率から算出される適正利率を上回る利率に基づく支払利息相当額は、原告が本件二社に対し金銭その他の資産又は利益の贈与を行ったものというべきであり、法三七条六項の寄付金に該当する。

3  この点、原告は、原告と本件二社は実質的には、同一会社という関係にあり、三社間での高金利貸付等の取引は、全体的視野に立っての経済行為であり合理性があるし、こいづみの決算期末に利率を決定して利息を計算することは、三社の会社経営の維持存続という観点から経済的合理性がある旨主張し、また、新生商事が倒産すると、こいづみ及び原告の信用不安が生じ、原告も倒産せざるを得ない状況に陥るので、新生商事及びこいづみの倒産を免れるように資金を合理的に運用することには、経済的な合理性があると主張する。

しかし、右三社間に密接な関連性があるとしても、右三社が、それぞれ独立の法人格を有する独立の経済主体である以上は、寄付金に該当するかどうか判断する際は、それぞれ独立した法人として評価するほかなく、三社間の密接な関連性をもって、右高金利による貸付等の取引に経済的な合理性があると認めることはできない。また、本件全証拠によっても、新生商事が実際に倒産の危機にあったことを認めるに足りる証拠はなく、仮に、倒産したとしても、原告の新生商事に対する債権額は、三四万一〇五三円であるから、これが回収不能になったからといって、原告に対する経済的信用不安が生じるおそれがあることを認めることはできないから、三社の経営の維持存続を理由として本件利息の利率に合理性を認めることはできず、これらの原告の主張は、いずれも理由がない。

五  適正利率及び本件借入金の適正な利息

1  前記認定した事実によると、原告の平成元年一〇月一日から平成四年九月三〇日までのこいづみからの借入金について、前期繰越金一億三七四九万九四三四円は、原告の店舗増築、パチンコ台増設等のために、こいづみが昭和五九年六月一九日に王子信用金庫に融資を申込み、同月二三日に実行され(本件第一証書借入金)、さらにこいづみから原告が転借したものであり、右一億三七四九万九四三四円は、この転借金のうち、平成元年一〇月一日現在で返済未了のものであること、右一億三七四九万九四三四円と原告のこいづみに対する未払金及び買掛金を借入金に振り替えた金額(合計二八一〇万円)と合計額は、平成元年一〇月一日、新生商事に対して債権譲渡されたこと、原告のこいづみに対する平成元年一二月一五日付けの九六〇万円及び平成二年三月二〇日付けの四一〇五万四九一一円は、原告の社員用マンション取得のために、こいづみが平成元年一二月一二日に王子信用金庫に融資を申込み、同月一五日に実行され(本件第二証書借入金)、さらにこいづみから原告が転借したものであること、本件第一証書借入金は、昭和六三年一二月三一日、その借入残高が一括して返済され、本件第三証書借入金に借り換えがされていること、本件第三証書借入金の利息は、平成元年六月四日から平成二年五月三日までは、四・九パーセント、同年五月四日から同年九月三〇日までは、五・五パーセント、同年一〇月一日から平成四年八月三日までは、六・〇パーセント、同年八月四日から同年一一月三日までは、五・八五パーセントであり、本件第二証書借入金の利息は、平成元年一二月一五日から平成四年一一月二〇日まで六・四パーセントであることが認められる。

2(一)  これらの事実に照らすと、本件借入金の主たる原資は、こいづみの王子信用金庫からの借入金のうち、本件第一証書借入金及び本件第二証書借入金であるといえ、本件第一証書借入金は、本件第三証書借入金に借り換えがされていることからすると、本件借入金の適正利率は、こいづみの王子信用金庫からの借入金のうち、本件第二証書借入金及び本件第三証書借入金の利率を基準に算定するのが相当である。

(二)適正利率

本件第二証書借入金と本件第三証書借入金別に本件各事業年度の各月の初日における借入金残高(A)に同時期の証書借入金の借入利率(B)を乗じて算出した金額を合計して(C・G)、月あたり単純平均したもの(D・H)を合計し(K)、また、本件第二証書借入金と本件第三証書借入金別に本件各事業年度の各月の初日における借入残高(A)を合計し(E・I)、月あたり単純平均したもの(F・J)を合計し(L)、KをLで除し、一〇〇を乗じた数の小数点三以下を切り上げた数を適正利率とすると、平成二年九月期の適正利率は、五・三九パーセント、平成三年九月期の適正利率は、六・〇七パーセント、平成四年九月期の適正利率は、六・〇五パーセントである(別表六の一ないし三)。

この点、原告は、本件借入金の適正利率の算定に当たっては、法人の利益追求の観点から、王子信用金庫からの借入利率に相当の手数料を上乗せして算定されるべきである旨主張する。

しかし、原告は、本件二社に利益を分配することを目的として本件利息を支払ったものであり、利息の算定に当たって手数料を考慮したことを窺わせる証拠は認められない。本件適正利率は、本件借入の実体、すなわち前記説示のとおり、原告が王子信用金庫から直接借入れをせずに、こいづみを介して借入をし、利益分散を図ったことに照らして、原告が直接借入れた場合の利率を基礎にして算出すべきである。そうすると、こいづみの王子信用金庫に対する利率に基づいて本件適正利率を算定したことには、合理性が認められる。

よって、この点に関する原告の主張も理由がない。

(三)  適正利息

本件二社からの借入金別に本件各事業年度の各月の末日における借入残高(a・d)に当該事業年度の適正利率(b・e)を乗じ、さらにこれに当該事業年度の日数のうち各月の日数の割合を乗じて、各月における適正利息(c・f)を算出した上、これを合計し(g・h)、さらにこの二つの利息額を合計して本件各事業年度における適正利息の金額(i)を算出すると、平成二年九月期の適正利息は、一〇〇一万三三八四円、平成三年九月期の適正利息は、一〇六〇万五八五五円、平成四年九月期の適正利息は、九四四万〇三六五円である(別表七の一ないし三)。

(四)  寄付金認定額

本件における寄付金認定額は、本件利息の金額から、(三)の適正利息の金額を控除して算出したものであり、平成二年九月期は、六八二四万四六九七円、平成三年九月期は、三二六五万六〇八五円、平成四年九月期は、八六三万七八八八円である。

(五)  未払寄付金

施行令七八条によれば、法三七条六項の寄付金の支出は、その支出がされるまでは、なかったものとされるところ、本件各事業年度においては、平成二年九月期は、五一〇四万六六九五円、平成三年九月期は、一四〇五万八六三五円、平成四年九月期は、一八〇八万六三二二円が未払である。そこで、未払寄付金の金額を算出するに当たっては、借入先別に、本件利息の占める寄付金認定額の割合を乗じて算出した金額を合計した金額を未払寄付金とすると、右未払寄付金は、平成二年九月期は、四二九四万八六三三円、平成三年九月期は、九三四万三七五一円、平成四年九月期は、一〇八二万一五〇四円である。よって、右各金額は、本件各事業年度の所得金額の計算においては、支出はなかったものとされるので、損金の額に算入することはできないから、本件各事業年度の所得の金額に加算する。

(六)  寄付金の損金不算入

原告は、施行令七三条一項一号の普通法人に該当するから、寄付金は、当該事業年度における原告の資本の月数換算額の一〇〇〇分の二・五に相当する金額及び同事業年度における寄付金支出前所得金額の一〇〇分の二・五に相当する金額の合計額に二分の一を乗じた金額が損金として算入される限度額であるところ(施行令七三条一項一号)、平成二年九月期の損金算入限度額は、九二万五〇五六円、平成三年九月期の損金算入限度額は、二八万五六六三円、平成四年九月期の損金算入限度額は、九万三一八五円である。

よって、寄付金の損金不算入額は、平成二年九月期は、二四三七万一〇〇八円、平成三年九月期は、六五九七万五三〇四円、平成四年九月期は、七〇六万六九五〇円であるから、本件各事業年度の所得の金額に加算する。

六  本件更正処分の適法性

1  平成二年九月期

以上により、原告の平成二年九月期の所得金額は、原告の申告にかかる三七八万六五二八円に、経費否認額六三万六四〇五円、減価償却超過額三五万四四七五円、期末における未払寄付金四二九四万八六三三円及び寄付金の損金不算入額二四三七万一〇〇八円を加算した七二〇九万七〇四九円であり、平成二年九月期の所得に対する法人税額は、法六六条一項及び二項並びに所得税法等の一部を改正する法律(昭和六三年法律第一〇九号)一七条により、右所得金額七二〇九万七〇四九円のうち、八〇〇万円以下の部分については一〇〇分の二九の税率を、八〇〇万円を超える部分六四〇九万七〇〇〇円(通則法一八条一項により一〇〇〇円未満の端数を切り捨て後のもの)については一〇〇分の四〇の税率をそれぞれ乗じて合計した額二七九五万八〇〇〇円から、法六八条一項及び施行令一四〇条の二の規定により、利子、配当等の収入についてすでに源泉徴収されていた税額一万七六一九円を控除した額二七九四万一一〇〇円(通則法一一九条一項により一〇〇円未満の端数を切り捨て後のもの)である。

そして、右金額は、平成二年九月期の納付すべき法人税額(裁決により一部取り消された後の金額)二七九四万一一〇〇円と同額であるから、平成二年九月期の更正処分は、適法である。

2  平成三年九月期

原告の平成三年九月期の所得金額は、原告の申告にかかる△二六四万一一三五円に、期末における未払寄付金九三四万三七五一円及び寄付金の損金不算入額六五九七万五三〇四円を加算し、他方、減価償却費超過額の当期認容額一万五二四二円、未納事業税認容額八一〇万〇九〇〇円及び期首における未払寄付金四二九四万八六三三円を控除した二一六一万三一四五円であり、平成三年九月期の所得に対する法人税額は、法六六条一項及び二項により、所得金額二一六一万三一四五円のうち、八〇〇万円以下の部分については一〇〇分の二八の税率を、八〇〇万円を超える部分一三六一万三〇〇〇円については、一〇〇分の三七・五の税率を、それぞれ乗じて合計した額七三四万四八七五円から、法六八条一項及び施行令一四〇条の二の規定により、利子、配当等の収入について既に源泉徴収されていた税額四万五七一五円を控除した額七二九万九一〇〇円である。

そして、平成三年九月期の納付すべき法人税額七二六万四二〇〇円は、右金額の範囲内であるから、平成三年九月期の更正処分は、適法である。

3  平成四年九月期

原告の平成四年九月期の所得金額は、原告の申告にかかる〇円に、期末における未払寄付金一〇八二万一五〇四円、寄付金の損金不算入額七〇六万六九五〇円及び繰越欠損金一〇万八五四八円を加算し、他方、減価償却費超過額の当期認容額一万四五八七円、未納事業税認容額二二六万七四〇〇円及び期首における未払寄付金九三四万三七五一円を控除した六三七万一二六四円であり、平成四年九月期の所得に対する法人税額は、法六六条一項及び二項により、所得金額六三七万一〇〇〇円に一〇〇〇分の二八の税率を乗じて算出した額一七八万三八八〇円から、法六八条一項及び施行令一四〇条の二により、利子、配当等の収入についてすでに源泉徴収されていた税額九六四九円を控除した一七七万四二〇〇円である。

そして、右金額は、平成四年九月期の納付すべき法人税額一七七万四二〇〇円と同額であるから、平成四年九月期の更正処分は、適法である。

七  本件過少申告加算税賦課決定処分の適法性

本件更正処分は、前記のとおり適法であり、通則法六五条に基づき、原告が本件更正処分に伴い新たに納付すべきこととなった本件各事業年度の税額(ただし、平成二年九月期及び平成四年九月期については、裁決により一部取り消された後の金額)を基礎として算出される、原告が納付すべき本件過少申告加算税の額は、次のとおりである。

1  平成二年九月期

過少申告加算税の基礎となる税額二六八六万円(納付すべき法人税額二七九四万一一〇〇円から、原告の平成二年九月期の確定申告における差引合計法人税額一〇八万〇三〇〇円を控除した額(ただし、通則法一一八条三項により一万円未満の端数を切り捨てた後のもの))に通則法六五条一項の規定により一〇〇分の一〇を乗じて算出した金額二六八万六〇〇〇円に、原告が新たに納付すべき法人税額(二六八六万〇八〇〇円)のうち原告の平成二年九月期の期限内申告税額一〇九万七九一九円(納付法人税額一九万〇四〇〇円、中間申告分の法人税額八八万九九〇〇円及び控除されるべき所得税等一万七六一九円の合計額)を上回る部分に相当する金額である二五七六万円(通則法一一八条三項により、一万円未満の端数は切り捨て)に一〇〇分の五を乗じて算出した金額一二八万八〇〇〇円を加えた三九七万四〇〇〇円である。

そして、右金額は、平成二年九月期にかかる本件過少申告加算税賦課決定処分における過少申告加算税額(裁決により一部取り消された後の金額)と同金額であるから、右金額は適法である。

2  平成三年九月期

過少申告加算税の基礎となる税額七三四万円(納付すべき法人税額七二九万九一〇〇円に原告の平成三年九月期の確定申告における還付金額四万五七一五円を加算した額(ただし、通則法一一九条一項により、一〇〇円未満の端数を切り捨てた後の金額について、通則法一一八条三項により一万円未満の端数を切り捨てた後のもの))に通則法六五条一項により一〇〇分の一〇を乗じて算出した金額七三万四〇〇〇円に、原告が納付すべき法人税の税額(七三四万四八〇〇円)のうち五〇万円を上回る部分に相当する金額である六八四万円(通則法一一八条三項により、一万円未満の端数を切り捨てた後の金額)に一〇〇分の五を乗じて算出した金額三四万二〇〇〇円を加えた一〇七万六〇〇〇円である。

そして、平成三年九月期の過少申告加算税額は、右金額の範囲内であるから、平成三年九月期にかかる本件過少申告加算税賦課決定処分は、適法である。

3  平成四年九月期について

過少申告加算税の基礎となる税額一七八万円(納付すべき法人税額一七七万四二〇〇円に原告の平成四年九月期の確定申告における還付金額九六四九円を加算した額(ただし、通則法一一九条一項により一〇〇円未満の端数を切り捨てた後の金額について、通則法一一八条三項により一万円未満の端数を切り捨てた後のもの))に通則法六五条一項により一〇〇分の一〇を乗じて算出した金額一七万八〇〇〇円に、原告が新たに納付すべき法人税の税額(一七八万三八四九円)のうち五〇万円を上回る部分に相当する金額である一二八万円(通則法一一八条三項により、一万円未満の端数を切り捨てた後の金額)に一〇〇分の五を乗じて算出した金額六万四〇〇〇円を加えた二四万二〇〇〇円である。

そして、右金額は、平成四年九月期の過少申告加算税額(裁決により一部取り消された後の金額)と同額であるから、平成四年九月期にかかる本件過少申告加算税賦課決定処分は、適法である。

八  本件法人臨時特別税決定処分の適法性

平成三年九月期の法人臨時特別税に係る納付すべき税額は、課税標準法人税額四三四万四〇〇〇円(臨時措置法一一条二項により、被告税務署長が主張する原告の平成三年九月期の納付すべき法人税額七三四万四八七五円から、三〇〇万円を控除した残額(通則法一一八条一項の規定により一〇〇〇円未満の端数を切り捨てた後の金額))に、臨時措置法一二条により一〇〇分の二・五の税率を乗じた金額一〇万八六〇〇円(通則法一一九条一項により一〇〇円未満の端数を切り捨てた後の金額)である。

本件法人臨時特別税決定処分における納付すべき税額は、一〇万七七〇〇円であり、これは、右被告税務署長の主張にかかる税額一〇万八六〇〇円の範囲内である。よって、本件法人臨時特別税決定処分は適法である。

九  本件無申告加算税賦課決定処分の適法性

原告は、平成三年九月期において、法人臨時特別税の申告をしなかった。平成三年九月期の法人臨時特別税に係る無申告加算税の額は、本件臨時特別税に係る納付すべき税額一〇万円(通則法一一八条三項により、一万円未満の端数を切り捨てた後の金額)に、通則法六六条一項により一〇〇分の一五を乗じて算出した金額一万五〇〇〇円である。

本件無申告加算税賦課決定処分の無申告加算税の額は一万五〇〇〇円であり、右税額と同額である。よって、本件無申告加算税賦課決定処分は、適法である。

一〇  本件裁決の適法性

原告は、被告審判所長は、原告が本件法人臨時特別税決定処分に対して、全部取消の審査を求めているにもかかわらず、これを一部の取消とし、その一部についてのみ審理したものであるから、本件裁決は、全体として違法である旨主張する。

しかし、法人臨時特別税の税額は、法人税の課税標準である所得金額に基づいて算出された法人税の額に基づいて一義的に算出されるところ、本件のように、原告が、審査請求において、法人臨時特別税の基準法人税額となる平成三年九月期の法人税について、納付すべき税額が零円を超える部分及び還付金の額に相当する税額が四万五七一五円を下回る部分の更正処分の取消を求めていたような場合は、法人臨時特別税の課税額は、法人税の課税額により一義的に定まるから、その審理、判断は、もっぱら法人税の課税額の審理をすることによって尽き、このような法人臨時特別税の仕組み及び法人税の課税処分に対する不服審査との関係によれば、本件法人臨時特別税決定処分に対する審査請求については、実質的かつ当然にその全部を審理の対象として、本件更正処分等とともに実質的に審理・判断したものとみるのが相当であり、主文において明確に全体の取消について掲記されていないことをもって、本件裁決の審理手続に審理不尽等の取り消されるべき違法があるとはいえない。よって、この点に関する原告の主張は、理由がない。

一一  結論

よって、原告の本訴請求は、いずれも理由がないから、これを棄却することとし、訴訟費用の負担について、行政事件訴訟法七条、民事訴訟法六一条を適用して、主文のとおり判決する。

(口頭弁論終結の日 平成一〇年一二月七日)

(裁判長裁判官 星野雅紀 裁判官 小島浩 裁判官 檜山麻子)

別表 一の一の一

平成二年九月期 法人税の課税処分の経緯

<省略>

別表 一の一の二

平成三年九月期 法人税の課税処分の経緯

<省略>

別表 一の一の三

平成四年九月期 法人税の課税処分の経緯

<省略>

別表 一の二

平成三年九月期 法人臨時特別税の課税処分の経緯

<省略>

別表二

本件借入金及び本件利息の各期末の明細

<省略>

別表三

借入利率の対比表

<省略>

別表四

原告及び関係二社の各事業年度末の損益等の状況

<省略>

別表五の一

原告のこいづみからの借入金の状況

<省略>

別表五の二

原告の新生商事からの借入金の状況

<省略>

別表六の一 適正利率の計算明細(平成2年9月期)

<省略>

別表六の二 適正利率の計算明細(平成3年9月期)

<省略>

別表六の三 適正利率の計算明細(平成4年9月期)

<省略>

別表七の一 本件適正利息の額の計算明細(平成2年9月期)

<省略>

別表七の二 本件適正利息の額の計算明細(平成3年9月期)

<省略>

別表七の三 本件適正利息の額の計算明細(平成4年9月期)

<省略>

別表八 未払寄付金及び支出寄付金の計算明細

<省略>

別表九

本件係争各事業年度の寄付金の損金算入に関する計算明細

<省略>

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例